軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

独断もやむを得ず

地震津波から1週間たった現地では、救出活動から被災者救援活動に移行しつつあるが、救援物資の配給がままならぬ様子がTVでうかがえる。
現地からの「要請がないから待っている」などというとぼけた防災センター?もあるらしく、普段の上司の教育が推察できる。ハンコがないと一歩も動かない役所根性…
攻撃を受けている最中のハワイ真珠湾で、武器庫係が「要請伝票を持ってこない者には弾薬を出さない!」といった逸話が残っているが、どうも地震津波被害よりも“人的被害”が影響しているらしい。
いくら普段は「前例がない」と「石橋をたたいて渡る」役人でも、「たたいても渡らない」様じゃ役立たずだろう。
現地の民間ガソリンスタンド店主が社長に無断で被災者に燃料を“無料”で配っていたが、おそらく彼はあとで給料から天引きされることなく、逆に社長から表彰されるだろう。


ところでこれは身勝手な思い付きだが、ガソリンスタンド従業員のようなベテランで構成したチームで、被災して動かない車から慎重に容器に燃料を抜き取ることはできないのだろうか?
もちろん一時しのぎだが、ライトバン程度を動かしミルクやおむつ、生理用品、下着など小物を配給できるのではないか?


その昔、壊滅したラバウルでは、機体残骸から部品や燃料を集めて1式陸攻を組み立てて千歳に戻った例がある。コンパスもなかったから天測で北上し木更津についたとき「幽霊部隊」と言われたという。
しかし一番困ったのは、電熱装置も風防もない機体だったから、木更津で給油して東北を北上中、津軽海峡の雪雲の下を飛んだ時で、猛烈に寒くて操縦かんを握っているのが精いっぱいだったという。

貧乏空自でも部品取りは得意技、何とか一時しのぎでもいいから燃料を“調達”して、救助されたお年寄りや赤ちゃん、子供たちの体力維持に努めてほしいと思うが、所有者不明だから”窃盗”だとか、消防法など、禁じる規則があるのだろうか?非常時だろうに…


仙台の臨時補給処には物資が山ほど届いているという。国が県に、県が各避難所に配分するルートに従っているそうだが肝心の避難所に燃料不足で分配できないという。


大本営が計画を立てて命令しても、南方戦線には届かず弾も食料も届かないまま強力な米軍と戦ったわが将兵のことが浮かんでくる。沖縄もそうだった。
こんなときは、ガソリンスタンドの店長のように「独断専行」も必要だろう。


「独断」とは、状況が急変し適時これに応ずる命令を受領できない場合、全般状況を考察して上級指揮官の意図を明察し、自己の部隊の任務を判断し、状況の変化に応じる最良の方策を決定し、自主積極的に任務を遂行する。この際、速やかに自己の企図および行動について上級指揮官に報告することである。

現在の目的はただ一つ「被災者救済」。“憔悴”して部下に当たり散らす「将帥」の指示を待っていても届かないのではないか?現場で活動する隊員諸君の機転がきいた“独断”に期待したい。


ところで原発対処は最終段階に入ったようだ。やはり自衛隊が「特攻攻撃」させられ、CH-47で4回空中散布したようだが焼け石に水だろう。しかし放射線を恐れない隊員たちは大したものだ。私もヘリのライセンスを持っていれば、特別志願して仲間に加わり1番機に搭乗して上空から水をまきたかった。
私の場合、いくら放射線を浴びてもすでに子作りは終わった“枯山水”、これ以上頭髪が減ることもなく、むしろ早く黄泉の世界に行きたいくらいだから…
若く将来ある隊員に異常がない事を祈るばかりである。

おそらく今日が山場、冷却を継続するため「決死隊」が編成され、爆弾3勇士のよう次々に突撃することになるのだろう。非核3原則下の自衛隊には、核防護装備もほとんどない。
本人たちの決意は十二分に理解できるものの、ご家族の心配は言語に絶するだろう。防衛省は家族に対するケアを忘れないでほしい。
とうとう恐れていた『目立ちたがり屋集団・リベラル政権』下での「無計画作戦」が始まった。
出血は避けられそうにないが、せめて「大出血」だけは避けなければならない。
もちろん、現場に投入されてともに戦っている警察官、原発職員についても同様である。


ここでくじけたらご先祖様に申し訳がない。「皇国の興廃はこの一戦にあり」、大御心を体し、英霊のご加護を信じて突撃し、日ごろの成果を示してほしい。「至誠通天」、勇気ある諸官の武運を祈りたい。