軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

資料から:国連中心主義の矛盾

先日、わが国の国防の基本方針に掲げられた国連中心主義に疑問を投げかけた。

今回の資料は、平成5(1993)年2月に、当時のガリ国連事務総長の訪日に伴う「日本に対する期待表明」に関する、新聞各社の反応である。

 

まず、2月5日付の読売新聞だ。

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これは同じく読売の会見詳報である。

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次は産経新聞記事である。

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読売、産経共に常識的な解釈で、わが国に「憲法改正」を期待していると書いた。

これに対して朝日は2月14日の社説でこう質問した!

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更に朝日は、2日後にガリ総長の来日をこう伝えている。

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更に朝日は2日後の18日にガリ総長と会談した時の宮沢首相に対して、社説でこう質問している。

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処が面白いことに、静岡新聞が、共同通信を引用する形で、緒方貞子・国連難民高等弁務官の意見を紹介した。

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ここでは「日本では自衛隊の海外派兵の是非をめぐる論議に終始していることに疑問」を表明し、「(自衛隊派遣はじめ)広くいろいろな形で参加するべきだ」と述べたとある。

他方、毎日新聞は、2月26日の≪記者の目≫欄で、渡辺美智雄副総理・外相の訪米と、ガリ総長の訪日を取材した印象を「立場の説明だけではなく、明確なメッセージを発せよ」と「日本外交の進路」を提言した。

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何となく「国連中心主義」は、わが国の安全保障を高めるためと言うよりも、朝日新聞社のご都合主義に利用されている気がしないでもない。

国連中心主義を強調する我が国の防衛政策は、その裏で、一部メディアに”噛みつかれる”度に、国連に協力しようとはしないという、摩訶不可思議な現象を呈して国際的に不信感を買っているが、そんな矛盾を抱えた「ご都合主義」が、いつまで続くのかと情けなく思う。

こうして我が国の憲法改正論議と、自衛力強化論議は、長い間「健全な議論」を封殺されてきたのである。

一過性の新聞記事も、時系列で並べてふり返って見ると、時代背景はもとより、そのメディアのスタンスが非常によくわかるので面白い!