軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

新型肺炎を告発した医師の死亡から見える中共の闇

昨年暮れ、新型肺炎武漢で真っ先に告発した医師・李文亮氏が自分も感染して死去した。12月に危険を感じた李氏が友人にメールしたところ、これが拡散したため当局から処罰された本人である。

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© 東洋経済オンライン 34歳の李文亮医師は武漢市中心医院の眼科医。彼は率先して原因不明の肺炎が発生していることを周囲に注意喚起したが、そのSNSスクリーンショットが拡散されたことで、職場や警察から事情聴取を受けた。李医師は診察の過程で自身も新型肺炎に感染、多くの同僚や両親も感染している(写真:取材対象者が中国の独立系メディア「財新」に提供)

 

中国の独立系メディア「財新」は、1月30日に李氏にインタビューした記事をを公表しているが、彼は遼寧省出身で今年34歳になるという。「知り合いばかりのコミュニティや世渡りが好きではない」との理由で、南方の地方大学を受験し「安定感のある分野を専攻したい」として、武漢大学の七年制の臨床医学学科に入学し、卒業後はアモイで3年間働いた後、2014年に武漢に戻り武漢市中心医院で働き始めていたという。新型肺炎の感染が拡大した昨年末、武漢では現地の医師による注意喚起が早くから行われていたが当局は“デマを流布したもの”に対する処罰を発表、李医師も含む8名に処分を下した。つまり“事件を隠ぺいしようとした”のである。

「財新」は【2020年2月7日8時00分追記】として、「李医師は治療を続けていましたが、2月7日未明に亡くなったため、記事末尾に経緯を追加しました」と一文追加した後、注目を集めた李文亮医師へのインタビュー記事を公表している。

インタビュー記事の一部

李医師:当日の夜、何人もがスクリーンショットを撮って私に質問を投げかけてきました。しかも彼らのスクリーンショットは完全なものではありませんでした。本来「SARSの患者が7名確認された」という文言の後に、さらにそれがコロナウイルスであり分類分けされている最中だということも強調したのですが、ネットで広まったスクリーンショットにはその文言が含まれていませんでした。

 それを見かけた時はとても不運に感じ、恐らく処罰を受けるだろうとも考えました。それ自体がセンシティブな情報でしたし、ちょうど両会(編集注:人民代表大会と政治協商会議)が開かれていてみんなが敏感になっている時期でもありました。スクリーンショットにモザイク処理も施されていなかったので初めは怒りを感じましたが、今では少し落ち着いています。みんな焦りを感じ、家族や友人に知らせたかったのでしょう。

財新記者:その後、処罰は受けたのでしょうか?

李医師:そのスクリーンショットが拡散された夜(19年12月31日)の1時半、武漢衛生健康委員会で会議が行われ、われわれの病院の医院長に呼び出され事情を聞かれました。夜が明けて出勤した後、再び監察科で事情聴取を受けました。私自身の状況や情報源について、自分の過ちに気がついたかなどの質問をされました。

 その後はまさか警察から連絡が来るとは思いもしませんでした。1月3日、電話が掛かってきて派出所に出向き「訓戒書」に署名するように指示されました。それまで警察とは関わったこともなかったので、とても心配しました。

 署名をしなければこの状況を脱せないと思い、署名をしに行ったのですが、この件については家族にも伝えませんでした。

 当時はとても不安で病院から処罰を受けないか、将来の出世に影響しないかなどと考えていたんです。

 その後、友人がその話を聞きつけ記者を紹介してくれたので、その件について話しました。(中略)

財新記者:警察があなたに渡した「訓戒書」にはネット上に不正確な情報を流したとありました。また、当時はあなたがデマを流したと考える人もいました。それについてはどうお考えですか?

李医師:私はデマだとは思いません。なぜなら報告書にはきっぱりとSARSと書かれていたからです。それに私は単に友人達に注意喚起をしたかっただけで、パニックを引き起こしたかった訳ではありません(当時李医師はグループチャット内に検査報告書をアップロードしている。その臨床病原体スクリーニング検査の結果によるとSARSコロナウイルス緑膿菌、その他46種の口腔・気道の細菌が”高い信頼性”を持って陽性であることが示されている――財新編集部注)。

財新記者:デマではないとのお考えであれば、今後法的な手段でその主張を伝えようという気持ちはありますか?

李医師:それはありません。司法的なプロセスは怖いし面倒でもあります。公安当局の手を煩わせたくはありませんし、私自身も手間を掛けたくありません。人々が真相を知ることこそが大切で、自分の汚名を返上することはそれほど重要なことではありません。正義は人々の心の中にあると思います。それから私の医師ライセンスが取り消されたのではないかとも囁かれていますが、事実ではありません。そこははっきりとさせておきたいです!(以下省略)

 このインタビュー記事には、李氏(監視下にある人民)の政府に対する恐怖感がにじみ出ている。つまり、彼は「健全な社会に必要なのはさまざまな声だ」と言論統制を暗に非難しているのだ。同時に当局はすでにSARSと認識していたこともわかる。

他方、彼が勤務していた武漢市中心医院は中国版ツイッターの微博への投稿で、「当院の眼科医、李文亮氏は不運にも新型コロナウイルスの感染拡大と闘う取り組みの中で罹患し、あらゆる救命措置を講じたものの、7日午前2時58分(日本時間同3時58分)に亡くなった」と説明したというが、これまた胡散臭い。口封じではなかったのか?

これが「中華人民共和国」という“経済大国”の実像なのだが、今回のコロナ騒ぎで、世界中が改めてこの国が“異常な虚像国家”であることを認識したことであろう。

この件で「中国人」排斥の動きが広まっているのは“善良な人民”には迷惑なことだろうが、共産党専制主義国に住む悲劇と解釈すべきものかもしれない。

それにしても、中国国内の死者は600人を超えたというから、大量死者数を“小出し”にしてごまかしているのではないか?

さらに病原菌の正体も何か怪しいところがある。

この国のGDPはじめ統計は全くでたらめであり、世界はほとんど信用していないから、今回の事態に関する情報もほとんど信用されていない。信じているのは我が国のメディアと政治家くらいのものだろう。

台湾や香港など、大陸に接する国々では、北京が公表する数字とは桁違いの数字を挙げて厳重警戒しているが、わが厚生省は独自の見解を持たないようだ。

降ってわいた危機に、政府がおろおろしているのは基本的に「軍事的観点」から物を見ないという戦後憲法症候群の最大の欠陥だろう。

中には防護服10万着を差し上げようという奇特な方もいて、日本人はどこまでお人よしか!と情けなくなる。国民の健康と生活に危機が迫っているというのに、他国民の心配か…

メディアも視聴率稼ぎで、人権第一だとか奇妙な論を強調するから、噂が噂を呼び、逆に「人種差別」を煽っている始末。

結局最後には「憲法に明記されていない自衛官」が尻ぬぐいさせられることになるのだろう。マア、トンコレラ鳥インフルでも、防護服に身を固めて始末させられた経験があるから、最後の砦は自衛隊!ということになるのかもしれない。

「備えなけれがかくの如し!」無防備国・平和日本の末路も浮き彫りになってきたようだ。

 

届いた書籍のご紹介

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「軍事研究3月号」

今月号の巻頭言で志方先輩は、イランのソレイマニ司令官爆殺と、中国の新型コロナウイルス対策について書いている。

武漢市の実態を知ってからの習近平主席は「疫病を予防する戦争」と銘打って、「果敢に対応したとみることもできよう…最低限の体裁を整えたのだろう」と評価?しているが私にはブログに書いたように、細菌兵器の失敗に気が付き、慌てて命令したのじゃないか?と思われる。いずれにせよ、「東京オリンピックに影響が出るかもしれない」という点には同感だ。

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ジャパニズム53」

矢作氏と並木との対談「外国に利用されない意識を一人一人が持てば日本は変わる」は同感だが、不可能じゃないか?とも思う。政治家がすっかり篭絡されているのだから…

私は「アメリカによるイラン司令官殺害と金正恩委員長の苦悩?」と題して、司令官爆殺で一番おびえたのは首領様だという一文を書かせてもらった。興味ある方はご一読あれ!